38歳書道を始めました

会社のオフィスの目の前に書道用具を売っているお店がある

今時、書道をやっている人なんて大していないのでもちろんお客なんてほとんどいない。 たまに骨董品を中国人相手に売って利益を上げているようだ

 

千代田区の1階にその店があるんだけれども多分そのビルのオーナーなんじゃないかなぁと予測している。確認したわけではないが他のビジネスモデルで賃料払えるとは到底思えない

書道をやらなきゃいけないと思っている理由は毎週のように美術館に行き、書の見方がよくわからずなんでまるでピカソの絵を見ているかのように理解できないことがあるからだ

もう一つの理由は亡き父親が書道が好きで何かと家の中では書道ばっかりしていた記憶がある。

そんな環境に育っていたにもかかわらず私は全く書道に興味がなかったんだけれどもあれから30年以上経ってからなんとなくやってみようという気になったんだ。

多分父親の影響なんだろうけれど種を植えて芽が出るまでに30年以上と言うのはなかなか時間がかかっていて人生っぽくて興味深い

月曜から日曜日まで書道教室はそのビルの2階で行われているのだけれども毎日先生が違うようだ。

個人的には草書に憧れていたのでそういうのを専門にしている先生に習いたいなーと思いつつパンフレットをもらって数年放置していた

細川ガラシャのチラシ書を美しいと感じていた

ゴルフを始めてゴルフが火曜日から土曜日で 日曜日と月曜日が休みだったのでなんとなく月曜日が時間があるから月曜日のコースに申し込んだ。

仕事の、目の前のオフィスに移動することで心理的障壁も低かった

見学に行った初日

何が起こっていたかと言うと生徒の人たちは(大人)が1週間でかけて書いた作品を机の上に立ち広げ先生に診てもらっていた

作品は7枚ぐらいあって2人が同時に作品を見せて先生が
”右落ち”

と言うと右の方を他の作品に入れ替える

そしてすべての中から1番良い作品を残してどこが良くてどこが悪いのかと言うのを評価するのだ

この作業が淡々と繰り返されている空間。

はじめての経験なのでこの空気にびびった

 

私は結構いろんなことを経験しているのであまりビビる事は無いのだけれども久しぶりに緊張したのでここに入ろうと決める

 

月謝は6000円で毎日昇給試験があるという

 

ただ私は昇給とかに全く興味がないので

”これやらなきゃいけないんですか”
と空気を読めない質問をし先生は
”やらなきゃいけないです”

 

ちなみに私はその当時38歳で先生は34歳

男性で口数が非常に少なくほとんどしゃべらない

私は字が下手なので書道教室にいる男性クラスの中で最も下手だったけれども周りからどうしてここに来たのかここの先生はすごい人だからと言うことをしきりに

説明してくれた

その時は何が凄いのか全くわからなかったけれどもあれから1年経って図書館などで書道の本を読んで学んでいくとあの先生は本当にすごかったんだなぁと実感する

書道については無知すぎて本当に何もわからなかった

 

# 1ヵ月目 

横の書き方を習うんだけれどもこれが普通の私たちは認識するような書道とはまた違って最初の入室のところで筆のバネを使った書き方をする。

”書道は習字は違うから”

と先生に教えられる。

先生から

”毎日家で練習しないと上手くならないよ”

と言われていたのだけれども筆を洗う作業がめんどくさすぎてこのとき、土日しか練習していなかった。

亡き父親が残していた筆があったのでこの筆で書いていいですかと言ったらそれはチラシ用だからダメだと言われて
”臥牛”

を買いなさいと指示される

1階の小道具屋で”どれですか?”と聞いてそれを購入

墨を入れるのは2分の1で上の方まで全部角をつけないように指示された

ところがこれが問題で使い終わった後、放置していくと硬くて書きづらくてしょうがない。

だから使い終わったら水で洗うんだけれども水で洗うと根元までいっちゃって困るのだ

 そういう場合はタコ糸で縛って対応するらしい

しかしネットで調べてもあんまりその情報が出てこない

臥牛と言う風でもネットで調べたら全く出てこなく書道業界の保守性にゲンナリする

 

初日の作品はもうどうしようもない位、下手でバランスも取れてない

先生も
”まぁ初めてだからしょうがないよね”

と感じで赤入れをしてくれた

初めて何も知らない私に大東文化大学の一年生の男の子が私の指導に当たってくれた。その男の子は
”自分大東文化大なんですよね”

と言ったのだけれども私はその当時大東文化大学と言う書道家というのが書道を志す人たちにとって非常に有名な大学と言うことを知らずその発言が自慢と言う事は全く気がつかずつまらない返事をしてしまった

その人はここに優秀な先生がいるからと言うのでここに来たらしい

大学でも書道をしてその後書道教室でも練習するとなかなか真面目な感じがするけれども話を聞く限りあまり書道の練習には精を出していないようだ。

ちなみに書道科なので夏休みは書道合宿があるらしい

もはや自分からすると別世界の話である

 

#飲み会(夏のなんとかかんとかって言ってた)

先生は中国に留学していてどうも書道をやっている人間はみんな書道中国に留学するのが当たり前らしい。私にとっては非常に新鮮な話で興味深い。だからこそできるだけ自分とは全く関係ない業界に身をおくと言う事は重要な気がする

YouTubeで書道やらないですかと言うとYouTubeは外道らしく書道界からつまはじき者として潰されるらしいなんて保守的な世界なんだろう

そしてYouTubeで発信している人たちは間違いなく下手なので参考にならないと言っていた 

 

2ヶ月目

相変わらず土日しか練習していないのであまり上手くならない。あまりにも自分の上達速度の遅さにイライラしていた。

 

3ヶ月目

全然上手にならないのでさすがに先生もこいつだめだなと言う感じで適当にお手本の赤入れをしてくれるようになってしまった。さすがにこれではまずいなと思う

 

4ヶ月目

筆に角をつけて練習が終わった後洗わなくてはいけないと言う構成はめんどくさいのでいろいろ調べていると水でかけるボードみたいなものがあることに気づきそれを購入するために1階の所道具屋で予約したんだけれどもなかなか来ない

予約してから3週間ぐらいしてやっときた

これを購入してから会社の休み時間1時間のうち15分を昼職には、残りの45分は階段の踊り場でひたすら練習している

その時間になるとNasuが警備員の見回りで必ず7階から階段で降りてくる人がいるんだけどお疲れ様ですと言われて多分あの人はこの人なんで毎日書道の練習してるんだろうと不思議に思っているに違いない

5ヶ月目

毎日45分練習するようになったので 毎週提出する作品が徐々に上手くなってきた。

周りの生徒も

"

あれなんかこいつ上手くなってるぞっ"

と態度が変わっているのがわかる

やはり毎日一定時間練習するのは大事なんだなぁと実感する

6ヶ月目

道教室の時間に

水でかけるボードを持参して練習していたら古株の中年女性から注意を受ける。

”書道は墨で書いてなんぼだから水で書くのはやめろ”

とお叱りを受ける。

まぁそういうことを言われるとは思っていたけれどもとりあえず書道っていうのは非常に保守的なところで困る。

そういえば1ヵ月目の時にクロムハーツとかアクセとかつけて書道教室に行ったら大学生の男の子に

”そういうのはつけちゃダメです”

とお叱りを受けた

 

7ヶ月目

2020年の3月コロナが流行り出した頃、

”なんかコロナが流行ってるね”

と言うような話でちょっと盛り上がっていた。

そうそうバレンタインデーのお返しで高級ハーブティーを渡したらすごく喜んでくれた

8ヶ月目

コロナで日本が大変になり会社でもテレワークが実施されるようになった。書道教室もコロナの影響で月に1、2回しか実施することがなくなってしまったのだ

 

9ヶ月目から12ヶ月目

コロナで書道教室は中止になり通信での添削になった

私のレベルで通信で添削されたところで得られるものはないのでこの数ヶ月間1度も自分の作品を書道の本部へ送った事は無い

どんな添削が行われているかは泣き父親がそういうのを受けていたので大体想像できていたけれど7月のある日たまたま書道教室があった時に行ったらやはり他の生徒が添削してもらった作品を見てあーやっぱりこういう昔ながらのやり方をしているんだなぁと私の想像の斜め上を全く行っていなかったのでちょっと残念だった。

他の生徒も言っていたけれどもズームとかでオンラインでやってくれればいいのにと言っていたけれどあの保守的な書道と言う狭い世界でそれが実施することがどれだけ大変か想像すると頭が痛くなる

 

2020年の8月いっぱいで書道教室を辞めた。

理由はコロナで会社のオフィスが維持できなくなったからだ。

ちょうど1年間をここに通ってきたことになる。

1日45分練習していたのでまぁそれなりに成長はしたけれどもあまりの成長の差に愕然とする。

書道は本当に難しい1年間やってきたけれどもやっと行書に入って終わってしまった

もう少しやってみたいと言う気持ちもあったけれども1年間やればもう充分だろう。

次は絵画教室のデッサンに行く予定だ

またいつか書道に帰ってくると思うその時まで温めよう。